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ところが昭和の戦後期から京焼風の色絵陶器で乾の異字体と言われる赤色の独特の窯印がある物がお庭焼きに後続する林田焼であると古物商の間で言い始めて、
その説を取り上げる研究家収集家も現れました。
しかし、旧林田藩領域内で「林田お手焼き」以降に作陶された痕跡は全くありません。窯跡はおろか藩政資料地方文書にも関連すると思われる記載は全くありません。
一次資料となる文献資料が全く存在しないだけでなく糸口になるような伝承すら実際には存在しません。
兵庫県陶芸博物館や姫路市工芸館では当初より根拠となる一次資料が全く存在しないので公的には認定しませんが、
旧新宮町の施設で「揖保郡三窯」として新宮焼野田焼とともに林田焼として展示され図録も刊行されました。
それでたつの市歴史文化財課に図録に林田焼と明示して断言する文面を掲載した根拠の提示を申し入れましたが、
公文書で「収集家の言をそのまま掲載したまででありなんの根拠もありません」公的に林田焼と認定したわけではない旨の回答がありました。
古物市場で10枚ほど箱に入った幕末から明治期に掛けて作られたと思われる乾字朱銘の皿が数千円で落札されてそれが姫路周辺の骨董屋ではたつの市の図録を根拠に
一枚数万円の値段が表示されている現状です。
たつの市歴史文化財課では問い合わせがあれば事情を説明して公的に林田焼と認定していないと回答するとの事でした。
しかし、林田藩で一時期作陶されていたのは事実であり公的には未調査ですがお庭焼きの窯跡と伝承されるところから窯道具や陶片が採取されており
その陶片類は乾字朱銘の陶器群とは全く異なるものであり「林田お手焼き」と伝承されている陶器群との類似性は確認できます。
なぜ一次資料が存在しない理由として、「林田焼と言う名前を出さずに京焼として売る方が高く売れるから」と言われていますがこれも骨董屋の作り話と思います。
兎も角現段階でこの様な乾字朱銘の陶器群を林田焼とする根拠は全く存在しません。異論のある方は学術的な一次資料を示して反論願います。
ヤフオクと言う場ですのでこれ以上の詳述は避けますが明確に林田焼と断定できる学術的な根拠は全く存在しません。
「昔からうちにあったから林田焼や」とか「わしが林田焼と言うたら林田焼や」は論外です。
どなたかこの焼物の本当の正体をご存知の方はご教示をお願いします。
異議の有る人間は学術的な根拠を元に反論して来い。
「林田御手焼」 幻の林田焼再考
私が初めて「林田焼」なるものと邂逅したのは弱冠を少し過ぎた頃に地元の高名な芸術家から瓢型の徳利と色絵の煎茶器五客を拝見したのが最初の出来事でした。林田焼と言う概念を別とすれば無銘の「古い上品な京焼の優品」といった感じでした。
それから十年近くのちに河野鉄兜の遺墨を探しに訪ねた姫路のある古玩肆で「林田焼がある」と見せられたのが「乾字朱銘」の陶器でした。
その後に自分自身が「乾字朱銘」の陶器の膾皿20枚を出したことがある。それで兵庫陶芸美術館の学芸員に写真を送ると折り返しご返事があり「林田焼に関しては発掘調査されたわけでもなく学術的に未解明であり写真の陶器を林田焼と断定はできない」と言われました。
しかし、一部の収集家研究家は「乾字朱銘」の陶器群を「林田焼」と堂々と言っており専門誌に投稿したりしていたので私としては「林田焼」と思い込んでいました。
今から数年前に宍粟市北部の某家からお譲り頂いた中に「乾字朱銘」の陶器が2点(蕨絵六角猪口10客と浪千鳥の描かれた茶碗1点)含まれており当然林田焼と信じていたので手元に残して置いた。
その後にそのお宅の古文書の中に明治29年の「蔵帳」(収蔵品目録)を見出した。特徴の記載から「乾字朱銘」の陶器と断定できる箇所があるが「林田焼」とは書かれていない。また別の文書に蕨絵の猪口を入手した時の記載も見出しが「粟田焼」と記載されている。
この宍粟の素封家は幕末期に安志藩老犬甘氏の娘が輿入れしてきたほどの家で蔵帳に伊万里焼尾張焼出石焼など詳しく陶器を分類されているのに「乾字朱銘」の陶器を「林田焼」としていないのは、その当時は「乾字朱銘」の陶器群が「林田焼」と言われていなかったことを証明していると思われて「乾字朱銘」の陶器群を「林田焼」することに初めて疑念を感じた。
その様なことがあり今まで以上に「林田焼」なるものに興味が湧き「乾字朱銘」の陶器群を「林田焼」とする根拠を探し始めることとした。
まず以前からの知己である播磨地域では別格的に信頼できる明治時代から三代続く老舗の古美術商の意見を聞く事とした。伺って来意を告げると言下に「いまこの辺で林田焼と言われているのは本当の林田焼と違う。本当の林田焼は爺さんの頃に一度だけ出したと親父に聞いたことがあるが、兎も角、今林田焼と言われているのは戦後も相当経ってから姫路辺りの骨董屋が言い始めた」とのご教示を得る。目から鱗どころの話でなく驚天動地の驚きでした。
この時期の前後に明治期の龍野の骨董屋の「古物明細書」という文書をヤフオクで入手した。これは古物商(骨董屋、古美術商も法的には同じ扱い)が品物の買い先と品名と売り先を記載して定期的に警察で内容を確認されて公印が推された信頼性の高い文書である。その中の明治34年の分に「林田御手焼」との記載を発見した。林田の家が売り払いそれが龍野の豪商の手に渡ったことが明記されていた。
まず林田藩三代藩主建部政宇が鴨池で作陶した伝承が存在する。僅かだが鴨池で焼かれたと伝承される作品が存在する。近年研究家が鴨池で窯道具の鞘を含む陶片を採集されているし鴨池作陶説は事実ではないかと思われる。
ここで林田郷土史の記述が問題となってくる。ここにははっきりと「林田焼」と明記されているが文字資料としても「林田焼」との表現は管見の限りでは初出ではないかと思われる。それと林田郷土史に不鮮明ながら掲載されている陶器群は「乾字朱銘」の陶器群とは異質のもののようである。
それと林田郷土史の写真以外の林田焼に関する記述は根拠を欠いており推測の域を出ない。
「乾字朱銘」の陶器群を簡単に説明しますと仁清や乾山風の絵付けがなされた所謂京焼風の雅趣溢れるものであるが軟質陶器から磁器質に近いものまで多岐にわたり制作年代も古くて江戸後期から大正時代までの製作を含むとするのが陶磁器の研究家収集家の共通した意見ではないかと思います。それと驚くことに全国規模では大量に存在しているようなのです。
ヤフオクを確認すると「乾字朱銘」の陶器群が出品されておりだいたいが単に「京焼」とか「乾山写し」中には「尾形乾山作」としたり関東方面では幕末明治の陶工「三浦乾也作」とされていることが多い。
大量に現存する「乾字朱銘」の陶器群のような本格的な陶器の作陶には大規模な窯と作陶工房が存在したはずであるので、それに関する断片的な資料でも存在しないといけないがそれすら存在が見出せずその痕跡すら現実には存在しない。
これが「乾字朱銘」の陶器群を林田焼とすることは学術的に無理と結論付けて良いのではとする所以です。
まず三代藩主政宇が鴨池で作陶したのは事実と思われる。それは政宇の個人的な趣味で作陶された所謂「お庭焼き」でありそれが林田で「御手焼」と言われて僅かに伝存していたと思われる。
それで伝承と僅かな伝世品とで目にすることの殆ど無い「幻の焼き物」とされていた。私が「林田焼」が存在しないと言うのは三代政宇の作陶と言われる陶器群が僅かに「御手焼」と言われて伝存していた物であり「林田焼」という表現がされていなかったと言う意味合いです。
それで古い京焼の優品を昭和戦前期から根拠なく「林田焼」ではとされていたようであり現実に何点かは拝見もしましたがそれらは林田で作陶された根拠を欠きますが「乾字朱銘」の陶器でもありませんでした。
最近ですが近隣の自治体へ二十年ほど前に林田藩とも所縁が深い林田の旧家から寄贈された物の中に「政宇公御手焼」なるものが含まれていることがわかりました。現物を見せて頂きましたが詳述は公式発表に譲ります。今回の再発見の作品が基準となり「林田御手焼」「政宇公御手焼」の調査研究が進み再認識が行われると思います。
それで「林田御手焼」という陶器群の存在はまず間違いないでしょうが「林田焼」なるものは虚構とするのが私の現時点での考えであり「幻の林田焼」は本当に幻です。ましてや「乾字朱銘」の陶器群の学術的な林田作陶説は成り立たず虚構としか考えられません。
発掘調査するにもどこを掘ればいいのかです。考古学や古代史では偶然に未知の大規模な遺跡の発掘があり得ても近現代史的な考えでは文書や口碑伝承に鴨池以外の作陶説が存在しない限り発掘調査云々以前に鴨池以降の林田作陶説は学術的に成り立ちません。
「林田御手焼」は存在しますが「幻の林田焼」は本当の幻です・
私は初めから「乾字朱銘」の陶器群の林田焼説を否定的に考えていたのではありません。「乾字朱銘」の陶器群の林田焼とする学術的な根拠を探しているうちに段々と懐疑的になりこの様な結論に至ったのです。
紙数の制限で簡略な内容となりましたのでお申し越しがあれば詳細をお知らせいたします。
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